耐火性収納箱とは|令和6年7月の改正で、廃電池の保管が変わった

法令・改正

令和6年7月2日、リチウムイオン蓄電池の貯蔵に関する消防庁の通知が全部改正されました(消防危第200号)。平成23年の通知を、13年ぶりに書き換えたものです。

その中に、産廃業者のための記述が入っています。

例えば、大量の廃棄品(リサイクル予定のものを含む)を箱に収納して貯蔵する場合が想定されること

「廃棄品」と名指しされています。 これは見逃せません。

結論

  • 耐火性収納箱という考え方が整理された
  • 箱に入れると、箱ごとの指定数量の倍数を合算しなくてよい
  • 空地の確保や防火塀が不要になる場合がある
  • ただし条件がある。特に 「10%未満」の目視確認
  • 箱そのものにも厳しい基準がある(60分の耐火試験)

その前に:全員に必要なものではありません

ひとつだけ、先に書いておきます。

耐火性収納箱は、安全のために買うものではありません。 消防法の「数え方」を変えるための道具です。

  • 普通に置くと、同じ場所にあるものを全部足して数えます
  • 箱に入れると、箱ごとに別々に数えてよくなります

つまり、足すと指定数量を超えてしまう人のための道具です。

量が少なくて、まだ指定数量に届いていないなら、買う必要はありません。 ふた付きの電池用容器で十分に意味があります。そちらは電池はどう保管するかに書きました。

この記事は、「数え方を変えたい」段階に来た人向けに、通知の中身を細かく読み解いたものです。

箱に入れると何が変わるか

① 指定数量の倍数を合算しない

これが一番大きい。

通常、同じ場所に危険物が複数あれば、全部足して指定数量と比べます。足していけば、すぐ超えます。

ところが、耐火性収納箱に入れた場合、次を満たせば箱ごとに別々に数えてよいとされています。

  • 箱の中の危険物の総量が指定数量未満であること
  • 箱に標識・掲示板を設け、さらに蓄電池等を収納している旨を表示すること

つまり、箱を分ければ、合算して超えるのを避けられるということです。

② 空地や防火塀が要らなくなる場合がある

危険物を扱う場所には、周囲に空地を設けるか、防火上有効な塀を設ける必要があります。これは土地と費用の問題になります。

耐火性収納箱に収納している場合(上の条件を満たすとき)、この措置を講じないこととして差し支えないとされています。

③ 隣の箱との距離も不要

箱が複数あっても、それぞれが条件を満たしていれば、箱と箱の間の距離は不要とされています。

箱に入れると、扱いが変わる

ただし、条件があります

ここが実務の肝です。どんな電池でも入れていいわけではありません。

条件ア:もともと基準に適合していたもの

製造時点等において、PSEマークがある、UN38.3に適合している、といった基準を満たしていたものであること。あるいは、通知の別紙2にある耐火性の試験(満充電で85℃まで上げて保持し、発火・破裂しないこと)に適合することが確認されていたものでもかまいません。

「今」ではなく「製造時点等」と書かれています。廃品を今から試験することはできないので、そこは問わない形になっています。

条件イ:★劣化したものが「概ね10%未満」

通知にはこう書かれています。

次のいずれかに該当するリチウムイオン蓄電池が概ね10%未満であることが目視等により確認できること
(ア) 腐食や損傷等により内部構造が露出しているもの
(イ) 液漏れが発生していることが明らかに確認できるもの

「目視等により確認」。 現場で、人がやる作業です。

つまり、

  • 壊れた電池が1割を超えると、この扱いは使えない
  • だから受け入れの段階で見る必要がある
  • 膨らんだ電池や割れた電池を、何も考えずに同じ箱に入れてはいけない

選別が前提になっているということです。ここを読み飛ばすと、箱だけ買っても意味がありません。

箱そのものの基準

「耐火性収納箱」は、名前のついた商品ではなく、基準を満たした箱のことです。通知の別紙に、こう定められています。

項目 基準
耐火性能(第一試験) 片面を60分加熱し、裏面に10秒を超える火炎の噴出・発炎がなく、火炎が通る亀裂がないこと
耐火性能(第二試験) 60分後に、隣に置いた試験材の裏面温度が80℃を超えないこと
隙間 炎や熱が容易に伝わる隙間がないこと
転倒 最大重量を入れて15°傾けても転倒しないこと
積み重ね 最大6mまで積んだ際の応力が許容範囲内(安全率3以上が目安)
表示 許容最大重量、最大積載高さ、積み重ね不可・機械荷役不可の表示

かなり厳しい基準です。 「蓋付きの金属の箱」では足りません。

適合の確認には、第三者機関の試験結果を活用して差し支えないとされています。実務上は、メーカーに適合を確認して買うことになります。

蓋付きの金属箱では足りない

もうひとつの道:梱包と高さ

箱の話とは別に、設備の負担を減らす道も示されています。

本来、危険物を扱う場所には、次の3つが求められます。

  1. 可燃性の蒸気を屋外の高所に排出する設備
  2. 床を危険物が浸透しない構造にし、傾斜をつけて貯留設備を設けること
  3. 電気設備を防爆構造にすること

ヤードでこれを全部やるのは、現実的ではありません。

次のいずれかに当たれば、この1〜3を講じないこととして差し支えないとされています。

条件 補足
3mの高さからコンクリート床に落下させる試験で、漏液や可燃性蒸気の漏れがない メーカーの試験結果を活用してよい
4.0kg以下ごとに段ボール等で包装・梱包し、3m以下の高さで貯蔵(2.8kg以下なら6m以下) 設備投資なしでやれる
オイルパン等で流出防止措置を講じる 箱や筐体の周囲に設置する

2番目は、現場の運用だけで満たせる形です。 小分けして、高く積まない。それだけです。

ただし、ここは誤解しやすいところです

これで不要になるのは、上の1〜3の設備だけです。

  • 指定数量の倍数の合算が免除されるわけではありません
  • 空地や防火塀が不要になるわけでもありません

それは耐火性収納箱の話であって、別の条文です。「小分けしたから消防法は大丈夫」にはなりません。

もうひとつ。廃品についてこの道が単独で使えるかどうかは、通知の読み方が分かれます。 廃品の扱いは「耐火性収納箱に収納して貯蔵する場合」を前提に整理されているためです。小分け梱包だけで済ませられるかは、所轄の消防に確認してください。

現場ではこうなっている

「電池用の箱」として売られているものが、すべて基準を満たしているとは限りません。

消防法の耐火性収納箱の基準と、「安全に運ぶための容器」は別の話です。買うときは、どの基準に適合しているかを確認してください。

そして、箱を入れたから終わりではありません。

  • 中に入れる前に選別する(10%の条件)
  • 標識と掲示板を出す
  • 蓄電池を収納している旨を表示する

この3つが抜けると、せっかくの箱が条件を満たしません。

私は消防職員として勤務した経験がありますが、立入で見られるのは、箱があるかどうかではなく、表示と中身と運用です。設備だけ整えて運用が伴っていない例は、実際によくあります。

<!– 現場メモ用:箱の選定や消防とのやり取りで分かったことがあればここへ –>

選別・表示・運用がセット

まとめ

  • 令和6年7月2日の通知で、廃電池の保管が名指しで想定された
  • 耐火性収納箱に入れると、倍数の合算が不要/空地や塀が不要になりうる
  • 条件は「壊れたものが概ね10%未満」を目視で確認できること
  • 箱の基準は厳しい。60分の耐火試験、80℃以下、15°で転倒しない
  • 4.0kg以下に小分けして3m以下なら、蒸気の排出設備・貯留設備・防爆構造が不要になりうる(倍数や空地の話とは別)
  • 箱だけでは足りない。選別・表示・運用がセット

基本的な考え方は電池を溜めると消防法がかかるに、現場での保管方法は電池はどう保管するかにまとめています。

※本記事は消防庁通知(消防危第200号 令和6年7月2日)を参照していますが、同通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたものです。火災予防条例は市町村ごとに定められており、運用は自治体によって異なります。 実際の判断は必ず所轄の消防本部にご確認ください。

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