耐火性収納箱は何のために買うのか|安全のためではありません

法令・改正

「電池を保管するなら、耐火性収納箱を買わないといけないらしい」

そう思っている方が多いのですが、少し違います。

この記事では、そもそもなぜ箱の話が出てくるのかを、順を追って説明します。消防法に詳しくない方でも分かるように書きます。

先に結論

  • 耐火性収納箱は、安全のために買うものではありません
  • 消防法の「数え方」を変えるために買うものです
  • だから、量が少ないうちは買わなくていい
  • 普通の電池用の容器で足ります
  • 必要になるのは、量が増えて、数え方を変えたくなったとき
箱は、安全のために買うのではない

ステップ1:消防法は「量」を見る法律です

まず、ここから説明します。

消防法には、燃えやすいものを、たくさん置いてはいけないという考え方があります。

ポイントは、「置いてはいけない」ではなく「たくさん置いてはいけない」というところです。少しなら、何も要りません。

では、どこからが「たくさん」なのか。

その線が、品物ごとに決められています。 これを指定数量といいます。

指定数量=「ここから先は、たくさんです」という線だと思ってください。

ステップ2:線を越えると、やることが増えます

線の手前か、越えたかで、求められることが変わります。

どれくらい置いてあるか 何が必要か
指定数量の5分の1より少ない 何も要りません
指定数量の5分の1以上〜指定数量未満 市町村への届出
指定数量以上 許可(施設としての審査)

階段になっています。 量が増えるほど、重くなります。

たいていの事業者は、一番上の「何も要りません」で済んでいます。 だから普段は消防法を意識しません。

量で、やることが変わる

ステップ3:電池は、この線の対象になります

リチウムイオン電池の中には、電解液という液体が入っています。これが燃える液体に当たる場合があり、消防法の対象になることがあります。

電池そのものではなく、中の液体が数えられるという感覚です。

ここが大事なところで、

電池を100個置けば、100個分の液体がそこにある

と数えます。1個は少なくても、溜まれば線に近づきます。

産廃の仕事は溜める仕事なので、いずれこの線に当たります。 詳しくは電池を溜めると消防法がかかるに書きました。

ステップ4:ここで「箱」の話が出てきます

線を越えそうになったとき、どうするか。

普通に考えると、方法は2つしかありません。

  1. 量を減らす(溜めない、早く出す)
  2. 届出や許可を取る

ここに3つ目の道があります。それが耐火性収納箱です。

何が起きるかというと、数え方が変わります。

普通に置いた場合

同じ場所にあるものは、全部足して線と比べます。

棚にある分 + 床に置いてある分 + 奥にある分 = 合計

足していけば、すぐ線を越えます。

耐火性収納箱に入れた場合

箱ごとに、別々に数えてよいとされています。足しません。

箱A = それだけで数える
箱B = それだけで数える
箱C = それだけで数える

それぞれの箱の中が線を越えていなければ、合計では越えていても大丈夫という扱いになります。

足すか、分けて数えるか

なぜ、そんな扱いが許されるのか

箱が、火を外に出さないからです。

耐火性収納箱は、片面を60分焼かれても、裏側に火が出ない性能が求められています。

つまり、箱の中で火が出ても、隣の箱に燃え移らない。

だから消防法の側も、

「別々の場所に置いてあるのと同じようなものだ」

と見てくれる、という理屈です。

部屋を分けたのと同じ扱いになる、とイメージすると分かりやすいと思います。

ステップ5:じゃあ、買うべきかどうか

ここが、この記事で一番伝えたいところです。

量が線に届いていないなら、耐火性収納箱は要りません。

繰り返しますが、箱は数え方を変えるための道具です。数え方を変える必要がないなら、買う理由がありません。

これで足ります

量が少ないうちにやることは、これです。

  • ふた付きの容器に入れる
  • 端子にテープを貼る
  • 他の可燃物から離す
  • 直射日光を避ける

これは電池はどう保管するかに書いたとおりで、消防法の話ではなく、火を出さないための普通の管理です。

電池用として売られている容器で、十分に意味があります。

では、いつ買うのか

こういう状態になったときです。

  • 取扱量が増えて、どう見ても線を越えそう
  • 届出や許可を取るより、箱を入れたほうが早い
  • 置き場所が狭く、空地や塀を作れない

「増えてきたから、そろそろ考えるか」というタイミングの道具です。最初に買うものではありません。

そして、買うときには箱の基準を確認する必要があります。「電池用」と書いてあるだけでは足りません。そこは耐火性収納箱とはに書きました。

箱を入れても、それだけでは足りません

もうひとつ、大事なところです。

箱を買えば自動的に扱いが変わる、わけではありません。 条件があります。

  • 箱の中の量が、指定数量より少ないこと
  • 標識と掲示板を出すこと
  • 蓄電池を収納している旨を表示すること
  • 中身の選別(壊れている電池が概ね10%未満であることを目に見える形で確認)

この4つが揃って、初めて「別々に数えてよい」になります。

箱だけ置いて、表示を出していない例は実際によくあります。 それでは条件を満たしません。

現場ではこうなっている

私は消防職員として勤務した経験がありますが、立入で見るのは「いい箱を持っているか」ではありません。

見るのは、

  • 何が、どれだけ置いてあるか
  • 表示が出ているか
  • 説明どおりに運用されているか

です。

そして、箱を買う前に相談したほうが、確実に早いです。 量を伝えて「うちはどこに当たりますか」と聞けば、そもそも箱が要るのかどうかから答えてもらえます。

買ってから「それでは条件を満たしません」と言われるのが、一番もったいないです。

<!– 現場メモ用:箱の要否を消防に相談したときの話があればここへ –>

まとめ

  • 耐火性収納箱は安全のためではなく、数え方を変えるための道具
  • 消防法は量を見る。指定数量という線がある
  • 普通に置くと全部足して数える。箱に入れると箱ごとに数える
  • だから線を越えそうなときに効く
  • 量が少ないうちは要らない。 ふた付きの電池用容器で足ります
  • 箱を入れても表示と選別が揃わないと条件を満たさない

量と規制の関係は電池を溜めると消防法がかかる、箱の基準は耐火性収納箱とは、日々の保管は電池はどう保管するかに書いています。

※本記事は消防庁通知(消防危第200号 令和6年7月2日)をもとに整理したものです。同通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出されたものです。火災予防条例は市町村ごとに定められており、運用は自治体によって異なります。 実際の判断は必ず所轄の消防本部にご確認ください。

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