「うちの現場から出たゴミを、うちの車で運ぶだけだから許可は要らないですよね」
半分正解です。ただ、この「うち」の範囲を勘違いしていると、気づかないうちに無許可営業になります。実際、グループ会社の廃棄物を運んでいて指摘されるケースは珍しくありません。
結論
- 事業者が自ら排出した産業廃棄物を自ら運搬する場合、収集運搬業の許可は不要
- ただし運搬基準は適用される。車両表示も書面の備付けも必要
- 別法人の廃棄物を運ぶなら、たとえ親子会社・グループ会社でも許可が必要
- 建設工事では、元請業者が排出事業者。下請が運ぶのは原則アウト
「許可が不要」なのであって、「何もしなくていい」ではありません。ここが最大の落とし穴です。
許可が要らなくても残る義務
自社運搬でも、次は守らなければなりません。
| 義務 | 自社運搬でも必要か |
|---|---|
| 飛散・流出の防止 | 必要 |
| 悪臭・騒音・振動の防止 | 必要 |
| 車両への表示 | 必要(許可番号だけ不要) |
| 書面の備付け | 必要(内容が異なる) |
| 収集運搬業の許可 | 不要 |
車両表示は、「産業廃棄物を運搬する車である旨」と「氏名または名称」を140ポイント(約5cm)以上。許可を持っていないので許可番号は表示しません。詳しくは産廃収集運搬車の表示義務を見てください。
書面のほうは、許可証も委託契約書も存在しないので、代わりに種類・数量・積載日・積込先・運搬先を書いたものを積みます。こちらは産廃運搬車に積む書面で整理しています。
自社運搬の車に何も貼っていない、何も積んでいない。 これが現場でいちばん見かける状態です。悪意がないぶん、そのまま何年も続いてしまいます。

「うち」の範囲はどこまでか
ここが本題です。判断の基準は法人格です。同じ看板でも、法人が違えば他人です。
| ケース | 自社運搬か |
|---|---|
| 本社から出た廃棄物を本社の車で運ぶ | ○ 自社運搬 |
| 同じ会社の別支店・別事業所の分を運ぶ | ○ 自社運搬 |
| 親会社の廃棄物を子会社が運ぶ | ✗ 許可が必要 |
| 子会社の廃棄物を親会社が運ぶ | ✗ 許可が必要 |
| 同じグループの別会社の分を運ぶ | ✗ 許可が必要 |
| 個人事業主が法人成りした直後 | ✗ 法人は別人格。許可の承継手続きが必要 |
資本関係がどれだけ濃くても、100%子会社でも、法人格が別なら他人の廃棄物です。他人の廃棄物を業として運べば収集運搬業にあたります。
最後の「法人成り」も見落とされがちです。個人で取った許可は、法人にはそのまま移りません。
建設工事は元請が排出事業者
建設工事から出る廃棄物については、特別なルールがあります。
工事の元請業者が排出事業者になります。 実際に作業をしたのが下請でも、廃棄物を出したのは元請という扱いです。
したがって、下請業者が現場の廃棄物を運ぶのは、他人の廃棄物を運ぶことになり、原則として収集運搬業の許可が必要です。「自分が作業して出したゴミなのに」と感じるところですが、法律上はそうなっています。
ただし、限定的な例外があります。解体・新築・増築にあたらない工事で、請負代金が一定額以下、1回の運搬量が少量、運搬先が元請の保管場所や同じ工事の別現場、途中で保管しない、契約書の写しを携帯する——といった要件をすべて満たす場合に限り、下請が運べます。
要件が細かく、一つでも外れると無許可営業になります。この特例に頼るなら、必ず管轄の自治体に個別に確認してください。 曖昧なまま運用するくらいなら、許可を取ったほうが安全です。
マニフェストは要るのか
自社運搬でマニフェストが必要かどうかは、処分を誰がするかで決まります。
| マニフェスト | |
|---|---|
| 自社で運び、自社で処分する | 不要 |
| 自社で運び、処分は他社に委託する | 必要 |
マニフェストの交付義務は「運搬または処分を他人に委託するとき」に発生します。運搬は自分でやっていても、処分を委託していれば交付が必要です。
自社運搬をしている事業者で、ここが抜けていることがあります。「運ぶのは自分だからマニフェストは要らない」という理解は間違いです。マニフェストの運用はマニフェストのD票が返ってこないときも合わせて確認してください。

現場ではこうなっている
グループ会社間の運搬は、本当に多いです。
社名が似ていて、事務所も同じ建物で、社員も行き来している。現場感覚では完全に「うち」です。それでも法人が2つあれば、廃棄物のやり取りには許可が要る。
やっかいなのは、誰も違法だと思っていないので、何年も続いた後に発覚することです。過去の分まで遡って問題になると、規模が大きくなります。
もう一つ多いのが、テナントや管理業務がからむケースです。ビルの管理会社が各テナントの廃棄物をまとめて運ぶ。テナントは別法人なので、これも他人の廃棄物です。
<!– 現場メモ用:グループ会社間や元請下請でヒヤッとした話があればここへ –>

まとめ
- 自ら出した廃棄物を自ら運ぶなら許可は不要
- ただし車両表示と書面の備付けは自社運搬でも必要
- 判断の基準は法人格。親子・グループでも別法人なら許可が要る
- 建設工事は元請が排出事業者。下請が運ぶのは原則許可が必要
- 処分を他社に委託するなら、自社運搬でもマニフェストは要る
※制度は改正されることがあります。実際の申請前に管轄自治体の最新の要綱をご確認ください。
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許可の更新期限、把握していますか
産業廃棄物の許可は5年で切れます。更新申請の受付は期限の3か月前からのことが多く、窓口が予約制の自治体では直前だと2〜3週間先まで埋まっています。
許可証の有効年月日を入れるだけで、いつ動き始めればいいかが分かります。入力した内容はどこにも送信されません。
現場へ行く前に、その1件の利益が分かります
住所と廃棄物を入れると、燃料・高速・車両費・人件費・処分費を引いた手元に残る額を計算します。いくらで見積もればいいかも出ます。


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