少量危険物の届出|産廃業者が見落とすところ

法令・改正

電池の話で「指定数量」を扱いましたが、これは電池だけの話ではありません。

産廃のヤードを見渡すと、危険物が普通に置かれています。 そして多くの場合、届出は出ていません。

結論

  • 指定数量の5分の1以上〜指定数量未満が「少量危険物」
  • 少量危険物の貯蔵・取扱いには、市町村の火災予防条例による届出が必要
  • 根拠は条例なので、自治体ごとに違う
  • 産廃のヤードには、電池以外にも危険物が多い
  • 廃掃法の許可とは完全に別の手続き

ヤードにある危険物

意識していないだけで、たいてい置かれています。

品物 危険物として
廃油 引火性の液体。産廃の品目としても代表的
塗料かす・廃シンナー 塗装業の現場から出る
リチウムイオン電池 中身は電解液
廃アルコール類 工場・研究施設から
自社用の軽油・ガソリン これも数えます

最後が落とし穴です。自社の車に給油するために置いているドラム缶も、危険物です。 「廃棄物ではないから関係ない」とはなりません。

消防法は「何のために置いてあるか」ではなく、「何がどれだけ置いてあるか」を見ます。

電池だけではありません

届出が要る量

消防法は、燃えやすいものを「たくさん」置くことを規制する法律です。少しなら何も要りません。

どこからが「たくさん」かの線が、品物ごとに決められています。それが指定数量です。

階段はこうなっています。

量 必要なこと
指定数量の5分の1未満 届出は不要(火災予防上の配慮は必要)
指定数量の5分の1以上〜指定数量未満 少量危険物貯蔵取扱届出
指定数量以上 危険物貯蔵所の設置許可

5分の1というのが、意外と小さいです。「ドラム缶1本くらい」で届出が要る場合があります。

ただし、具体的な数量は品物の種類で変わります。 第4類の中でも、第一石油類か第二石油類かで指定数量が違う。だから「何リットルから」を一律に言えません。

いちばんの落とし穴は「足し算」

同じ場所にある危険物は、種類が違っても足して数えます。

やり方は決まっていて、品物ごとに 「置いてある量 ÷ その品物の指定数量」 を出し、その答えを全部足します。 これが倍数です。

  • 合計が 0.2(5分の1)以上 → 少量危険物の届出
  • 合計が 1以上 → 貯蔵所の許可

たとえば、こうなります。

置いてあるもの 倍数
廃油 0.10
廃シンナー 0.08
自社用の軽油 0.05
合計 0.23

どれも単独では5分の1未満です。けれど足すと0.23で、届出が要ります。

「1つずつ見れば大丈夫」は通りません。ヤード全体で見てください。

種類が違っても足して数える

電池についても同じで、耐火性収納箱に入れた場合だけ、箱ごとに分けて数えるという例外があります。

自治体によって違います

ここが産廃と大きく違うところです。

  • 廃掃法 … 法律。全国共通(運用に差はある)
  • 少量危険物 … 市町村の火災予防条例。自治体ごとに定められている

総務省消防庁が火災予防条例(例)という手本を示していて、多くの市町村がそれに沿っていますが、細部は違います。

  • 届出の様式
  • 添付書類
  • 事前相談の要否
  • 構造や設備の基準の細部

隣の市でできたことが、こちらではできないということが起こります。

こちらは市町村の条例

現場ではこうなっている

届出が出ていない理由は、悪意ではありません。知らないからです。

産廃業者は、都道府県の廃棄物担当とはやり取りします。けれど消防とは、基本的に接点がない。 消防車が来るのは火事のときだけ、という認識になりがちです。

そして消防の立入は、産廃の立入とは別に来ます。

私は消防職員として勤務した経験がありますが、立入で最初に見るのは、置いてある物と量と表示です。「産廃の許可は持っています」という説明は、そこでは答えになりません。根拠法が違うからです。

逆に言えば、先に届出を出しておけば、それだけで話が通ります。 届出は「許可」ではないので、基準を満たしていれば出すだけです。構えるほどの手続きではありません。

<!– 現場メモ用:消防とのやり取り、届出を出したときの話があればここへ –>

書き出して、聞きに行く

まず何をするか

① ヤードにあるものを書き出す

品名と、おおよその量。これがないと相談にもなりません。

② 所轄の消防本部に相談する

「産業廃棄物の収集運搬をしていて、こういうものを置いています」と伝えれば、届出が要るかどうかを教えてもらえます。

聞きに行くことで不利になることはありません。 むしろ、知らずに置いているほうが不利です。

③ 電池については、保管方法もあわせて相談する

令和6年7月の通知で、耐火性収納箱の扱いが整理されています。最新の通知を踏まえた相談ができると、話が早いです。

廃掃法との関係を整理する

混乱しやすいので、並べておきます。

廃掃法 消防法
何の規制か 運ぶ・処分する 貯蔵する・取り扱う
窓口 都道府県・政令市 市町村の消防本部
根拠 法律 法律+市町村の条例
立入 廃棄物担当 消防
許可と届出 許可(5年更新) 量により届出 or 許可

両方必要です。 どちらかがあれば、もう一方が免除されるということはありません。

まとめ

  • 指定数量の5分の1以上で、少量危険物の届出
  • 電池だけでなく、廃油・塗料かす・シンナー・自社用の軽油も数える
  • 種類が違っても足して数える。 単独では足りなくても、合計で超えることがある
  • 根拠は市町村の条例。自治体ごとに違う
  • 廃掃法の許可とは完全に別。窓口も根拠も立入も別
  • まずはヤードにあるものを書き出して、消防に相談する

電池の指定数量については電池を溜めると消防法がかかる、保管の方法は耐火性収納箱とはにまとめています。

※少量危険物の基準・様式・運用は市町村の火災予防条例により異なります。 実際の手続きは必ず所轄の消防本部にご確認ください。本サイトは情報発信のみを行っており、届出書類の作成や手続きの代行は行っておりません。

NEXT

次に読むなら

許可の更新期限、把握していますか

産業廃棄物の許可は5年で切れます。更新申請の受付は期限の3か月前からのことが多く、窓口が予約制の自治体では直前だと2〜3週間先まで埋まっています。

許可証の有効年月日を入れるだけで、いつ動き始めればいいかが分かります。入力した内容はどこにも送信されません。

更新期限を調べる(登録不要)

現場へ行く前に、その1件の利益が分かります

住所と廃棄物を入れると、燃料・高速・車両費・人件費・処分費を引いた手元に残る額を計算します。いくらで見積もればいいかも出ます。

現場利益シミュレーターを使ってみる →